H&H

かつて僕はヒーローだった。 イギリスの家。俺はいつもながらにマズいスコーンを頬張る。 ああ、マズイ。本当にこんな核兵器を作れるなんてどういう作り方してるんだい。 それでも食べるのは良心。当然だよ、俺にしか出来ない役割だからね。 日本は善処しますの一点張り。フランスは逃げだした。 イタリアの兄弟に至ってはイギリスのデレというなの脅しに負けて食べて魂抜けていたみたいだし。 こんな風にマズイのを分かってて食べるのは俺だけなんだ。 気づいたら話は重々しい雰囲気になっていた。 何を話していたんだっけ。ああ、そうか。俺が独立した時の話をし始めたのか。 いつになったらイギリスは今の俺を見るんだろう。 いつになったら、俺が俺で居られるんだろう。 大概にして突然、あの頃は。とか小さいアメリカは。とか言われてもさ 覚えてるからってその頃に戻れるわけではないし ましてや独立して立派にやってる国になったわけだから、今さら、あの頃がどうとか言われても 俺は困る。いや困るんじゃなくて、寂しいのかもしれないな。 いつまでたってもイギリスに対等の扱いをされないことが寂しいのかもしれない。 でもそれって俺のせいというより、イギリスが俺に負けたせいだろう? なんで俺があーだこーだ言われなくちゃいけないんだい! そうだよ、俺はちゃんと、ちゃんと…俺の足で立ってるんだ! 「いつもいつもお前は…!」 「いい加減大人になったらどうなんだいイギリス」 「それはお前がなればいいだけだろ!」 「いつもいつも俺がどうなんだい?いつだって君が勝手に怒ってるだけじゃないか」 「だから、お前がなんでもかんでも無理に物事を通すからだろ!」 「ハハッナンセンスだね、無理に通す以外に道はあるのかい?」 「そ、れは、考えれば…」 「考えてる余裕も時間もましてやお金すらないのに?」 「…、それも考えるしかねえだろ!」 「……考えればなんでも思い通りになるのかい?」 「………そんなことは言ってな、いだろ」 「じゃあどういう意味なのさ、結局のところなにも解決しないじゃないか」 僕はいつからヒールになったんだろう。 「どっちが子供のままなのか、いい加減分かってくれよ」 「アメリカにきまって…」 「どっちがわがままなことを言ってるのかくらい分かるだろう?」 「そんなにあの頃がいいなら、今の俺に関わらいでくれよ」 「アメッ、…」 「俺は過去に縋りたくない。過去があって今なんだ、今を見てくれよイギリス」 「…それは…」 「君のためのヒーローは消えたんだぞ」 「俺は君のためのヒールになったんだ」 「なんだよそれ…悪役って…」 「いつでもどこでも悪役がいれば、それを倒しにくるヒーローが必要だろう?」 「ヒーローは消えたんじゃないのか」 「君のヒーローとしての俺は消えたけど、俺を倒しにくるのは俺じゃなくていいんだ」 「なにを言ってるのか分からないぞアメリカ」 「だから。ずっと俺だけを追ってればいいんだぞ、イギリス」 あの頃の俺じゃなくて、今の俺を見たらいいんだぞ。
2009 11 28