ストイックプレジャー

禁欲的にただ愛する 手は出さないけど口で愛してっていうことに置き換えたら 甘くて苦しいな 清い中、とでも言うのが正しいのだろうか バッツは俺に手を出さない もちろん、俺も手を出さない お互いにただ傍に寄り添うような状態 これが俗にいうプラトニックとも言えるものなのだろうか 「なあスコール」 「・・・」 「いつもなにを考えているんだ?」 「・・・不躾だな」 「俺は、スコールの乱れる姿とか想像してるわけ」 「・・・(唐突になにを言ってるんだ、本当に)」 「それで、その・・えー・・・」 「なにが言いたいんだ」 「つまり・・」 「・・・(そういうことをしたい、だろ)」 「あー・・・」 バッツから紡がれた言葉は不穏な空気となってまとわりついてる 純粋とはかけ離れていて、プラトニックとは全く違う ただ、今の状況から進めないからどうにかしたい、ということだろうか 俺はなにも展開ばかりを望まない 黙り込んだように見えたのかバッツが俯きながら声のトーンを落とした いつかは、求める いつかは、触れる そのいつかが今じゃないだけじゃないのか? 視線を落としたバッツをぼんやり見つめて考えていた 不意に、向かい合って座っていた身体が暗転した 俺の身体を押し倒したバッツは眉が下がった泣きそうな表情をしていた 泣きそうで、つらそうで、なにかを求めて力いっぱいに俺の肩を握り締めた 間が空いた その間にも、バッツがなにかを喋ろうとして、空気を割く音が何度か聞こえた 「好きだからさ、大切にしたくて、それでも、触りたくてさ」 「・・(それで、どうしたいんだ)」 「今はまだ、こうやって好きっていうのも恥ずかしいから、」 「・・・バッツ」 「うん?」 「顔」 「え?」 「そんなに赤いのは初めてだな」 「え!見るなよ恥ずかしいから」 「そういう表情も俺は好きだ、な(初めて、好きと伝えた気がする)」 「・・・っ」 「(好き、だな)」 「スコール」 「なんだ」 「もういっかい、好きって言ってくれ」 「・・・(好きだ)」 「俺も」 ようやく喋りだしたバッツが俺の頬を触れた 愛しく、優しく、ただ触れた 俺の顔もわずかに泣きそうに歪んでいたのかもしれない 暫く見上げたまま、愛を捧げる その愛とやらがあるのかそんなことは関係ないが どうやらバッツと俺にはあるのだろう 好き、の言葉がこんなにも愛おしくて、狂おしい
2010 4 14