伽哩に恋してる

「きゅーちゃん」 「なーに?」 「……いつまで待たす気なんだ」 「なーにがー?」 いらっとしながらアロマをガリっと口端でくわえていた 葉佩の部屋のベッドに腰を下ろしたまま早二時間 カレーを食べさせてもらえるという理由でホイホイついてきたのか 葉佩の部屋はカレーの匂いに満ちていた ぐぅ…と小さく皆守の腹の音が鳴った その音をかき消すように、葉佩へ怒気を含んだ声をかけた 相変わらず、間延びした返事 いらつきを通り越して、カレーひとつになにをしてるんだか。と呟いた それでも急かすように、皆守はまた声をかけた これで出来上がらないなら帰ろう、そんな風に考えていた皆守は 自然とベッドから二時間も動かなかった重たい腰を上げた 「きゅーちゃん」 「もう出来るよー」 「………なら…はやく、盛れ」 「はいはい」 ぐつぐつぼこぼこと煮詰まったカレーを寸胴鍋いっぱいに作った葉佩は、 火元から寸胴鍋を退かし、背中を向けていた皆守の方へ体を向けた 笑いながら冗談半分に、いつもより乙女チックにウインクをして呟けば、 皆守は鳥肌を立てながら寸胴鍋を奪い取ると同時に、葉佩の腰へ足を蹴り上げた 「そんな慌てることもないのにー」 「うるさい、カレーがないなら帰るまでだ」 「だから、愛をいっぱい注いで作ってるんじゃんかー」 「きもちわるいことを言うな!愛なんぞいらんわ!」 「あーん、そんな甲ちゃんもすきかもー」 「…!……!!」 蹴りをわざと受ければ頬を染めながら上目がちに皆守に視線を向けた その葉佩の視線に銜えていたアロマが床へと落ちていった きもちわるい!!!の大きな声だけが寮に響き渡った
2009 9 1