伽哩と私

学園内の端にひっそりたたずむ墓地 どことなく闇が多く纏っている 「九ちゃん」 「おや、甲ちゃん」 二人の男子生徒 片方は変な服装、頭にゴーグル、爆発物所持の疑いに加え銃刀法違反 もう片方は天然パーマにだるそうな姿勢の学ラン姿 「お迎えですかー?」 「誰がそんなマネをする。夕飯にカレーが余ったんでな」 「…ああ、所謂、残飯処理かよ」 「カレーを残飯と言うな!このすっとこどっこい」 墓地の一部が抜け落ち、地下へと進める その入り口からロープを伝って登ってきた変な服装の彼 足元の靴に視線がいき、自然と見上げ 天然パーマの彼、皆守甲太郎に視線があう 相手に名を呼ばれへらりと笑みを向ける 本人、如何わしいことこの上ない厳重注意の転校生、葉佩九龍 抜け落ちた穴部分から這い上がり 服についた砂やほこりを叩き落としながら皆守に声を掛ける 簡単に頭を振り皆守は言う 口元のアロマを上下に揺らし、いい具合にラベンダーの匂いが漂う ラベンダーの匂いに鼻腔擽られながら、皆守の言葉にチッと小さく舌打ち 残飯処理、言うなれば残りものを処分してもらう係 大丈夫かの心配の一言を期待していた葉佩にとってはがっかりもの 逆にカレー愛の皆守の前では禁句な言葉 カレーを残飯扱いする葉佩に一撃、二撃と蹴りをかます 「わわっ、ちょっと甲ちゃん」 「喰らえ、カレーを侮辱するやつはこうだ」 「…っギブギブギブー!」 疲れて這い登ってきた葉佩に体力の余裕なく 蹴りをかまし続ける皆守の攻撃を逃げ惑うように墓地を走る カレー愛は凄まじい 愛ゆえか、足の速さは異常、至極異常 泣き声あげながら結局つかまる葉佩 首を絞めるように皆守の腕が首に入ると葉佩は慌てて腕を叩く 力が抜ける感覚に少しずつ眠気も含まれ始め、うつらとなる目 しまったと焦って腕を退かす皆守 「おい!九ちゃんっ」 「………ちゅっ…ははは、騙されてはいかんぞ甲ちゃん」 「……死ね」 「っいたー!愛がない、愛がここにないよ!」 「黙れ、死ね、このアホ」 反応のない相手に声を掛け顔を覗き込む 急にぱちっと目が開き、唐突に唇に触れる感触に呆然とする皆守 葉佩の笑いに現状把握した皆守は当然のごとく立ち上がり葉佩の頭を地面に落とす そのままぐりぐりと顔を踏むようにして靴で苛める 吠える葉佩に容赦なく砂を食わす 断末魔のように「ひどい甲ちゃんの馬鹿」などと夜中に響く
2004 XX