鉛灰 1

夏。その季節がくる度に僕の目は鉛のようにくすむ。 陣内家の親戚一同が集まる栄おばあちゃんの七回忌。僕は大人になった。 その日、僕の初恋の人は結婚をした。健二さんは夏希ねえと幸せそうに笑顔を浮かべていた。 七年前に訪れた健二さんは色が白くて細くて背もそんなに高い印象はなかった。 今でも印象は変わらない。けど笑顔が増えた。 夏希ねえと一緒だから笑顔が増えたのか。結婚をしたのが嬉しいからなのか。 どちらにしろ僕にはどうでもいいことだった。 「健二さん」 僕は健二さんがお風呂へ向かう途中に納戸から声を掛けた。 相変わらず、この納戸は僕の隠れ家みたいなものだ。さすがにパソコンに向かうだけではなくて 回りの押し込められた本棚の中身を読み漁るのがもっぱらだ。 Ozの中では、今ではすっかりキング・カズマとしてではなく バックアップやセキュリティ管理の方に追われている。 「佳主馬くん!久しぶりだね」 「Ozでは会ってたけどね」 「そっか、でも佳主馬くんに実際に会える方がボクは嬉しいな」 「…僕も嬉しいよ」 納戸から猫背がちな体を起こして立ちあがった。 健二さんは笑顔を僕に振りまいた。その表情に胸がモヤモヤとした違和感を感じた。
2009 9 4