歪not

    僕を好きで居てくれなくちゃ、僕が壊れちゃうよ 「ねえ健二さん」 「どうしたの佳主馬くん」 「夏希ねえが健二さんのこと嫌いって言ったらどうする?」 「え?」 「だから、夏希ねえが嫌いって言ったら、健二さんどうするの?」 「…それは、ないから…その、大丈夫だ…よ?」 「それはないって誰が決めたの?」 「え、っ…ボクだけど…」 「ねえ健二さん」 「か、ずまくん…どうした…」 「健二さん、健二さんはどうしたら僕を見てくれるの?」 「ちょ、っ…佳主馬く…手を放し」 「嫌だよ、僕だけを見てよ、僕のことを見て、僕だけのものになってよ」 力加減なんて知らない、僕のことだけを考えて 眼の前にいる僕のことだけを考えて どこかにいる誰かを思わないで 「くる…し、…い」 「……ご、めん…」 「……ハァ…佳主馬くん」 「……」 「知って…る?…夏希先輩のボクに対する好きは…、…ライクなんだよ」 「なにそれ」 僕の手で苦しんでる 僕の手が健二さんの顔を歪めた 僕が、僕の、僕は… こんなことをされて笑うなんてありえない それも、僕が笑わせたわけじゃない 僕には、笑わせることは出来ないの? 泣かないで 顔を、隠さないで 「ボクは後輩でしかないんだよ」 「だからなに?」 「だから、夏希先輩はボクを見ては…」 「…ごめん、健二さん」 「ボクは夏希先輩に見てほしくて、振り向いてほしくて…」 「ごめん、ごめんね健二さん、ごめんね…」 「ボクはどうしたら…」 「健二さん、僕のことを見てよ」 「でもボクは…」 「今から、僕を見て」 「……」 「そして惚れてよ」 「………」 「僕は健二さんしか見れないんだ」 「健二さんが夏希ねえを見てるようにね」 「ずっと待つから、健二さんが僕を見るように、今よりもっともっと成長するから」 「だから」 「泣きやんで」     けど、僕はあなたを酷く壊した
2009 10 30